少年ブラック団 今日の練習 12/28


boss→SCHOOL←①

まずは自分で決めたラインを走らせます。
走ったあとに陣のラインに対して、「もうひとつ外回りのラインを走りなさい」の指示をします。

指導というものは「現行犯で言う」のと「あとから言う」のの、二つありますが、小さな子は犬の教育と同じで、「現行犯」で指導しないと、あとから言っても何を言っているのか分からない部分がありますね。

でもこれは、小さな子でなくて大人も同じで、女子部の指導の時にこの事は痛感し「走っている最中にストップさせて言う」のでないと、あとからは相手は何を言っているのか分からないのを指導者は知っておくべくです。

この動画、黒山選手が陣に「いんちき/イカサマ技」を教えているのが分かりますか。
ようは「右側に倒れている倒木に右足を寄りかからせて楽に走りなさい」というもの。

私の時代のトライアルは「自分で整備修理をやる、ジャンプをしない、下りは前から、木や岩に寄りかかったりしない」という、男道トライアル。
でも今は「イカサマもバレなきゃ技のうち」とは申しませんが、ルール違反ギリギリのテクニックも「技の引き出し」で「うまいことやりよるなぁ」ですね。

黒山選手の「倒れている倒木に右足を寄りかからせて楽に走りなさい」を現行犯指導ではなくて、黒山選手自身が自分のバイクでやって見せての指導風景です。
はたして小3と小1のちびっ子に理解できますでしょうか。

こんなインチキ技をこんな小さな子、そしてトライアルを始めたばかりのに教えていいのか、のご質問には「うちのチームの隊長は黒山選手で、乗る事はすべて黒山選手の教える事が正しい」方針です。

黒山選手の指導方法は「トライアルは算数ではない」と申します。
算数はまずは足し算を覚え、次に引き算、次にかけ算、次に割り算と進んでいきます。まず最初に、かけ算からというのはありえません。

でもトライアルは、まずスタンディングで次に8の字ターンで、その次に登り下りではありません。いきなりステアケースや飛び降りでもいいのです。
という事で、一番大切な事は“引き出しを多く持つ”ためには、最初から多くの技を何でもかんでも少しづつやっていこう、という方針です。

boss→SCHOOL←②

この動画は黒山選手が、とても大切な事を二つ教えています。

・その1

3速から2速、2速から1速は「上から踏みつけるだけ」だから、割と簡単に入ります。でも、シフトアップはなかなか難しいもので、そのテクニックを黒山選手が教えています。

「アクセルを開けて閉じたら回転が落ちてくるから、そのタイミングでチェンジペダルをかき上げなさい」を教えていますが、この事は誰でも教えられる事です。

でもここに「説得力」というものが入ってきて、黒山選手以上か同等の説得力のあるのは、あとガッチ以外にいません。
全日本8勝をあげている私でも、黙ります。

もうひとつ、黒山選手が「場所が悪い」と教えていましたが、陣は丸太を超えて左ターンしてから3速にシフトアップしていました。これを「丸太を超えてすぐ」の、教えられたとおり変えているのが分かりますか。

・その2

黒山選手、エンストしたおかげで世界選手権5勝目を逃した苦い経験があります。何年か忘れましたがドイツ大会オスナブルック会場の事です。
もちろんまだ2stBeta-Rev3の時代ですが、長い下りを下ってきていきなり加速して登りのラインで、下りはエンジンを空ぶかししながらとか、下りてすぐに空ぶかしをするとか、これは下りの鉄則なんだけど、この時は何故かこれをしなくて降りてすぐにアクセルを開けたもんだから、定番通りエンストです。

横についていたチーム監督のドナト.ミリオさんが「下りながらアクセルを空ぶかししろ」と、何度も言っていたのを覚えている。
この時にミリオさんがさかんにアクセルを開けるまねをして「レーシング、レーシング」と言っていて、あとで辞書見て調べてみたら「空ぶかし」と載っていた。

うちのチームは「Team黒山レーシング」だから「Team空ぶかしの黒山」になるかもしれませんね。

これにならないように、下ってきた陣に「アクセルを何回も開けて空ぶかししろ」と教えています。この事は「乗る事以外のテクニックの部類」に入りますので、教えなければなんでエンストするのか分かりません。

物事をやるのに、やってる最中に話しかけると手が止まる人と、手が止まらずその話が聞ける人、の二つに分かれます。
陣は後者で、走っている時にラインの指示やア〜ヤコ〜ヤ言ってもきちんと聞き分けられるライダーです。
陸は前者で、走っている時に何かを言っても無理、ですね。

でも「走っている時に何かを言っても無理」なのはダメというものでもなく、反面、おそろしいほどの集中力かもしれません。

黒山選手、陸のその性格を知っていますので「走っている最中は何も言わずただ見ているだけ」を実行しています。
もちろん走り終わったら「あとから言う」のの指導方法ですね。