夢に向かって、その2

小さいうちから「トライアル漬け」は、中学生くらいになってトライアルの面白さが「砂に水が吸い込む」ごとくに一番いい時期にバーンアウト(燃え尽き症候群)になりますんで、小さいうちはとにかく色々な自転車でいろいろと遊ばせる事が大切。
でも、他のスポーツのサッカーや野球をやらせると、そっちの方が面白くなって自転車で遊ばなくなるので、そのへんのさじ加減が難しいのです。

あるご夫婦がトライアルを楽しんでいて、その一人娘さんも小学校時代はトライアルごっこを楽しんでいました。小学高学年になって身長も伸びてきて、ずばり、お母さんよりもトライアルが上手になって、これは「第2の萩原真理子かライアサンツか」の期待。

ところがところが、中学校に進んで念願の吹奏楽部に入って「親の夢」すべてが終りました。
それはそうで山の中でおっさんに混じって泥まみれの難行苦行よりも、女学生仲間といっしょに楽しい部活の吹奏楽部が星の王子様ごとくに現れますと、トライアルは歯がたちません。

黒山選手や藤波選手は、筋金入りのトライアル一本道野郎で人生で他のスポーツをしたことがありません。
ですがお父さんの私は「小学生→水泳」 「中学生→陸上長距離」「高校生→柔道」「大阪府警→柔道→陸上長距離」とやっていまして、白バイ全国大会の訓練員に選抜されてトライアルを知り「多くのオリンピック種目のように自分の筋力体力で勝負する」よりも「拳銃射撃/アーチェリーや乗馬のように道具をあやつるで勝負」の方が素質があるのを知った次第。

小川友幸選手はやや違いまして、中学まではサッカーに卓球に楽器演奏にと多芸多才でしたが、どれもこれも芽が出ずにもんもんとしていたところにトライアルを知って、以後はトライアル一本道という次第。

「洋風に言うとエンタータテイメント」で「和風に言うと興行師」が今は本職になったけど、田中太一選手は小さいうちは「勉強の頭のすごくい い子」でした。
勉強の頭の良いのは神戸の山田哲也選手も同じで、この二人には少し及ばないけど小川友幸選手も勉強の頭のいい子でしたね。

この三人の頭の良 さは少年チームブラック団で群を抜いていまして、他あと全員は「お前らカマキリよりも知能指数が低いのとちがう」の横一線に並ぶレベル。
とにもかくにも、日本でトライアルやっている男の子の敵は「野球部にサッカー部」で、女の子の敵は「吹奏楽部にコーラス部」なのである。

 

21

左側に見えます薄茶色の家が、工場兼住宅の黒山レーシングです。

写真の通り、この家からダッシュ2秒の所に公園がありまして、この公園は 「ブランコや滑り台があって子供が遊び老人がくつろぐ公園」ではありません。
立地条件が悪くて、住宅地に出来ないから仕方なしに無理やり公園にした感じの公園で、それだからこそ、けっこう自転車トライアルにはいい配置地形の公園なのです。
人がくつろいでいる事は皆無なのも、自転車をガンガン乗り回すにはパー フェクトですね。

さてさて、この間は「春一番」は吹きませんでしたが「春の嵐」は、風と雨を引き連れてやってまいりました。この公園は、水はけの悪い公園です。で、ゲリラ豪雨が降りますとご覧のようにすぐに池が出来上がります。

22

りっ君も雨が降ると「公園が池になる」と知っていて、さっそく「お船お船~♪」と言いながら自転車でウオターセクションに挑戦を始めました。

23

水の中は抵抗があると知っているんで、必死でこぎます。

24

公園の周回コースの半分は池になっていて、やっと半分回って上陸地点が近くなってきました。

25

アップで見るとけっこうな水たまりですね。星飛雄馬の大リーグボール養成ギブスならぬ、りっ君のトライアルチャンピオン養成自転車こぎこぎセクションです。

26

今度は乗り物を取り替え「前後ブレーキなし」スケーター風自転車で、インドアセクションXトライアルに挑戦。
いつもは怖がらない弟の陣を先にやらせるんだけど、陣は福岡の小倉にお母さんと帰省しているんで、自分が一番に行くしかなくて怖がっています。

27

「先にやらせる踏み絵の弟もいないし、どうしようかな~↓↓」ですね。

28

二郎君から無理矢理行かされます。
これって「こたつに入ってミカンでも食べながら写真で見ると」どうという事はないセクションなのですが、実際に前後ブレーキなしで立って乗ってこの狭い一本橋を行くのは、けっこう勇気と技がいるのです。

29

次はこんな広いコンパネからスキーのジャンプ台を下るようなラインに挑戦します。
これだけだと、りっ君にとっては簡単簡単。

30

でもね、その先にあるこの細い一本橋を「ノーブレーキ」で狙うラインの練習です。
細い一本橋に突入する前にバランスを崩していたら、この一本橋は渡 れませんので何度もやり直し。

こう書くと「強制的にやらせている」みたいですけど、こういうセクションを作って放し飼いにしておくと、クリーンするまで何 度でも「やっている遊んでいる」これが一番大切ですね。

何でもそうですが、指導するというものは「ある時は強制、ある時は放し飼い」がよろしいようで「これが出来たらあとは自由だよ」「宿題すんだらあとは遊んでいいよ」と、まったく内容は同じです。

31

さっきまでのは「ノーブレーキ」のスケーターでやりましたが、今度はベダルをこいで進む自転車での一本橋です。

32

さあそうこうしていると、九州の福岡に帰省していた弟2歳の陣が帰ってきました。
ここから兄貴のええ格好が始まります。

33

さっそく「どうや、やれるかぁ~弟の陣っ♪」と、練習したチャリの実力を見せつけます。

34

いきなりこうなりますが弟は負けません。
「転けなれる」も大切なテクニックのひとつです。

35

兄貴の走りをしっかり見ます。

36

弟も順番にあとに続きます。
何となく、たった二人だけだけど「マスゲーム」やっているみたい。

今回の「小僧をチャンピオンにする道のり」の方法論ですが、ようするに「自転車やトライアル以外に興味を持たせないようにしましょう」がす べて。

何となく「彼女とつき合い始めたら、他の女に目がいかないようにしましょう」と同じような気がしますね。
「こうと決めたら浮気をせずに一本道」は、 人生何の世界でも同じでしょう。

でもでも「他人の花は赤い」のが世の常で、これは子供の世界でも同じ事。
「人生は一度きり、色々な事を経験して楽しみましょう」の人生論も いいでしょう。

でもこれは、例えばオリンピックを観戦する側の人の考え方で、オリンピックに出場している人は「それしかやった事がない」集団ですね。でないと、ひとつの事で大成しませんって。

「別に大成しなくてもいいけど」は、本人がそう言っているだけで誰でも人間というものは大なり小なり「これだけは負けたくない」の部分を持っているものです。

「ひとつのことで大成」しようと思えば「それしかやった事がない」の方法論しかないの。
これが、今回のお話しの結論です。

ブラック団少年チーム&レディスピンク団女子部チーム/監督いちろより~