夢に向かって、その10


<黒山健一のちびっ子達へのワンポイントアドバイス/文責:一郎>

 

多くの皆様からよく聞かれます。

黒山さんのところのお孫さん、最初は“自転車感覚と同じ”の、クラッチなしチェンジなしのオートマバイクになぜ乗せないんですか。

これのお答えは簡単で、

目指すトライアルは「クラッチとチェンジがある」んだから、最初から「クラッチとチェンジがある」のに乗せる必要があるのです。
これは黒山選手の一押し絶対のオススメです。
それと、この二つの操作に「変な癖」がついたら、それを直させるのに大変なのと、経験上、直させられない事の方が多いのです。

元女子部にいた美和、クラッチ操作は「人差し指一本」でしか出来ません。練習で最後の頃に「クラッチ操作が重い」と申しますので「中指を一本足して指二本で操作したら」のアドバイス。
ところが、中指を足しただけでまったくクラッチ操作が出来ないのです。それどころか、指2本をクラッチレバーにのせているだけで、ハンドルが引けないのです。

クラッチレバーの正しい操作方法は、こと「指のかけ方」に関しては基本は以下のとおり。

1.クラッチ操作の基本は、2輪教習所で教えるとおり、指全部、指4本をかけてのドラエモン握りが基本です。
2.少しだけ細かいクラッチ操作が必要なとには、指二本にして「人差し指と中指」の2本で操作する。
3.ややこしい細かい操作の時のみ、人差し指一本で操作する。
4.何もないコース移動の時は、クラッチレバーに指をかけずドラエモン握りで「温存」する。

前ブレーキレバーも同じことで、元女子部にいた智恵子、24時間前ブレーキレバーに指をかけてしかトライアルが出来ません。
本人に聞いてみるとお答えは明快で、前ブレーキレバーに指をかけていることで「怖かったら、いつでも止まれる安心感がある」だそう。
それと、特にステアケースは「行き過ぎた時にすぐに上で止まる為」だって。

前ブレーキレバーの正しい操作方法は、こと「指のかけ方」に関しては基本は以下のとおり。

1.クラッチレバーには、乗っている時は24時間「ひとさし指をかけている」は、今のトライアルだとあながち間違いではありません。
2.でも、前ブレーキレバーに乗っている時は24時間「ひとさし指をかけている」は、これによる弊害の方が多く、絶対に24時間「ひとさし指をかけて」乗ってはいけません。
3.後ろブレーキペダルの上に「常に右足のブーツを乗せて、いつでも踏める状態」にはしていませんよね。
4.前ブレーキレバーもこれと同じで「使う時のみレバーに指をかけて」「操作をしなくなったらすぐに指を離し、アクセルをドラエモン握りで操作する」のが基本です。

トライアルやっている間中、智恵子のように左右のレバーに指をかけて乗っている民間人どころか国際スーパーA級にもいますが、まあ、それなりの成績しか出ませんよね。自転車あがりの自転車のやりすぎライダーに、特に多いのです。

以下「たまたま、そうなっている写真をさがして解説しているのではない」のを前提に、小3ライダーと小1ライダーのライディングで解説します。

1

子供達は握力がないので、最初はというより基本は「2本指のピース握り」を徹底的に教え込んでいます。
この写真の細かいライン選びが必要な「岩と岩の間を抜ける」時は、大まかな操作しかできない後ろブレーキは使わずに、左右のレバー、クラッチ操作と前ブレーキ操作のみで走ります。

黒山選手が申しますように、指導というものは「足をついたかつかないか」よりも、「バイクの操作する部分を、正しく操作できているかどうか」の方が大切だそうです。すると、結果は必ず後からついてくる、だそうです。

2

インをしてすぐに右ターンのポイントですが、「先に目線がいっている」は、当たり前ですが本題ではありません。何もないセクションの中を走る時は「クラッチレバーのみに指をかけて乗る」ことが大切です。
前ブレーキレバーも後ろブレーキペダルも操作はしてはいけません。

3

同じ地形の兄貴の小3ライダーですが、同じようにクラッチレバーのみの操作です。弟の小1ライダーは「力と指が短い」ので常に2本指ですが、兄貴は肝心なところのレバー1本指が可能です。

兄貴はまだ「こども乗り」ですが、弟はすでに乗るフォームだけは「国際スーパーA級乗り」をしています。
これには後日談があって、黒山選手が「兄貴はバイクと体の大きさがあっていない」とのアドバイス。もともとこのRTL50Sは座っても乗れるようなステップ位置で、大会後に兄貴のバイクのみステップの位置を「後ろと下に、それぞれ20ミリ下げた」ところ、見事にこども乗りがなくなりました。

そう、ここに「出来る出来ないはどうあれ、お父さんは大切なメカニックである」となりまして、可能なら日曜大工の店に行きまして100Vで使える電気溶接機を買ってきて、フレームをいじるのもまた楽しいし、メカニックの原点でもあるのです。
帝国陸軍みたいに「根性だけではクリーンは出ない」のです。

本当のところは、この「お子ちゃまバイク」の次にワンランク上の、これとフルサイズのバイクとの中間の大きさのバイクがあればいいんだけど、トライアルに関しては世界中にないのです。
50ccの次は125ccとあり、次に250ccになり排気量はステップアップの排気量選択階段があります。ですが、バイクのがたいは125ccでもフルサイズ250のフレームに125をつんだがたいで「お子ちゃまがたいか、フルサイズがたい」かの、二つの選択しかないのが苦しいところですね。

4

この写真は、この後に左ターンしてホイルの高さくらいのステアケースに向かう手前の「バイクの速度を落とす」目的の場所で、バイクがまっすぐ向いているので「クラッチと前後ブレーキ」のすべてを使って、バイクのスピードとラインの修正をしています。

「バイクのスピードとラインの修正」と表現しましたが、わかりやすく二者選択風に言うと

・バイクのスピードを落とすのは後ろブレーキで
・バイクをコントロールするのは前ブレーキで

ですね。

先に書きましたが、。弟の小1ライダーは「力と指が短い」ので、左右レバーとも常に2本指です。黒山選手の教えによると「指2本が基本で、1本は応用」とのことで、このままずっとやるように指導しています。
黒山選手の教えには説得力があり、世界ランキング3位の19歳の時にイギリスのシェーフィルドのインドアで前回り転落事故にあって「両手首陥没骨折」の重症から復帰し、今でも左右の両手首にハンディをかかえている人からのアドバイスですよ。

先代ブラック団やってチーム員から世界チャンピオンが出て、次に女子部やってチーム員から女子6人目の国際B級が出て、今は2代目ブラック団やって、教えることも時代時代で違い、また進歩し、現役最先端の黒山選手の指導も入ってきて、自分には出来ないけどそれが出来る可能性のある若い後継者を育てる。今、これが天職だと思ってやっています。

ichro