ヤマハ発動機モータースポーツ活動計画の発表会


3月3日金曜日。東京都中央区で「ヤマハ発動機モータースポーツ活動計画の発表会」が行われた。ロードレース、モトクロス、トライアルの各オフィシャルライダーが一堂に会し、ヤマハ発動機代表取締役副社長、木村隆昭らと間もなく始まるシーズンへの心意気が語った。

ヤマハ発動機代表取締役副社長木村隆昭氏

会場で時間をとってもらい、黒山健一選手に話を聞いた。

「開幕戦を優勝でシーズンインしたいですね。実は今まで、開幕戦に勝ちたいという意識がさほどありませんでした。ただ、勝ったり負けたりと不安定なことをここ数年続けていて、やっぱり勝って始まるほうが気分的にいいので、1位をとりにいきたいと思います。運に左右されるような試合ではなく、自分で勝ちとる試合をしたいです。

昨シーズンの途中から乗り換えたニューマシンは、オフのトレーニングでマップの変更などいろいろしましたが、基本的に昨年走ったままの仕様で見た目も変わらないです。サスペンションもエンジンもよりトライアルをしやすい仕様に仕上げました。チーム体制に変わりはありません。

ここのところチャンピオンを取れてないので、まず、タイトル奪還が目標ですね。新型マシンを用意してもらうにあたり、いろいろな人に助けていただいたので、お礼をかねての1位、チャンピオンをとりたいです。

新しいマシンに乗り換えてから、今までできなかったラインを選んだり、今までできなかった技ができるようになりました。おかげでぼく自身、またさらにトライアルがおもしろく楽しくなり、モチベーションも上がってます。去年乗り換えた直後の大会は、ほとんど乗り込みもなかった大会だった。あれから自分のなかで、このマシンはこんな動きをするのか、もっとこうしなければならないと勉強してきましたから、あの時よりはこのバイクのことを理解できています。

キャブからFIへの変化は、アクセルに対して素直に安定して反応してくれるところが素晴らしいです。それでもキャブの方がいい場合もあるんです。絶対的にインジェクションがいいキャブがダメということではないんです。

ここ数年、練習でもマシンのセッティングやトラブルに悩むことが多く、練習よりそっちに時間を費やすことが多かった。いまは修理やトラブルがずいぶん減りました。久しぶりに、練習に集中できている実感がありますし、そして久しぶりに自分の調子がとても上がっています。

挨拶する黒山健一

インスタグラムやFBでぼくの見せ技を紹介していますが、新しいマシンは、ダニエルとかのトリッキーな技がとてもしやすいんです。実際に全日本などの競技に使うことはありませんけどね(笑)。

年齢的にも、あまり寄り道できない時期になってきました。しっかり結果を残そうと思います。体力的には昔にくらべて落ちてるとは思いますが、それを補う知恵が昔よりたくわえられているので、プラスマイナスでは、ちょっとプラスになっている気がしています。

年齢的には、アルベルト・カベスタニー選手はぼくの目標です。昔からずっと一緒に走ってきた同世代のライバルです。ライディングスタイルにも共感するものがある。カベスタニーはダニエルがとても得意なライダーですけど、ボウやラガとはちょっとちがう。基本的にオーソドックスな走りなんです。トニー・ボウはぼくよりも後の若い世代のライダーで、スタイルも乗り方もあまりにちがってしまうんです。メンタル的な目標で、憧れるのは藤波貴久の存在ですね。

今年は「はしゃがない」こと。「黙」をテーマ、なにも語らないというのを目標にしてます。人に伝えなければならない立場でもあるし、そういう機会も多いのですが、それによって自分が大きく左右される場合があります。まったく黙ってしまう必要はないのですけど、自分の世界に入って集中したいと。土曜日に会場に入ったら基本的に黙ろうと思ってます。あ、でもいろんなこと聞いてくださいね。それでいつもどおりペラペラしゃべっていたら、ああ、やっぱりこいつには無理だったんだなあと思ってください(笑)。

2017シーズンを戦うTYS250Fi

そして、木村治男監督にも聞きました。

「大きくは変わってないです。FIでは、性能は自由自在に作り変えられる。黒山選手のリクエストにこたえるべく、より調整している状況です。

パワーのカーブ、いままでのキャブとはぜんぜんちがう特性になってくるので、黒山選手がそれをうまく使えるようにとか。

挨拶する監督木村治男さん

キャブでは不安定なレスポンスがあるのですが、FIはそれがない。キャブは、場面によってついてくるかこないのか判断がむずかしいことがありました。しかしFIは必ずついてくるので、黒山選手の技術を安定して発揮できるようになったと思います。その安定感から、よりパワー感も引き出しています。

車体、フレームは変わってません。去年このマシンを作るときに苦労して出した仕様なんですが、黒山選手から、特に問題点が指摘されてない。黒山選手が「ふつうに乗れている」という意見が、私自身とてもうれしい評価です。これだけ特殊なレイアウトのオートバイなのに。

選手の力を常に発揮できるオートバイであり続けること。あわよくば選手の能力を助けられることが目標です。それができれば自ずと成績もついてくると考えています」

※自然山通信の記事を引用(掲載許可済み)