シェルコについている OLLE/R16V のリアクッション改善


一郎さんが少2の健一を連れて世界選手権フルエントリーしていた時分、一郎さんはどの国の大会も平均的に70人〜80人中40番くらいの位置。まぐれの最高位はチェコスロヴァキア大会の26位ですよ。
でも今はチェコスロヴァキアという国は存在せず、チェコとスロヴァキアに分かれてしまい、チェコは工業国でスロヴァキアは農業国という図式。

当時、チェコスロヴァキアのお金を2万円ほど持っていて、国が分離した後にチェコで使おうとしたら「兄ちゃん、単なる紙くずやで」と言われた記憶あり。
しょぼくれていたら、その使えないチェコスロヴァキアのお金を2,000円で買うという怪しい奴が話しかけて来て、チェコの新札お金の2,000円に換金した記憶もあり。

同じ時期にスペイン人で、同じくフルエントリーしていた同年齢くらいで背丈も一郎さんと変わらないライダーでペドロ.オーレというのがいまして、平均的にポイントが取れるか取れないかの15位前後をうろうろしていたの。

世界選手権ではないけど同レベルの大会、スコットランドでやる6日間SSDTでは一郎さんが36位でアモス.ビルバオが37位で、このペドロ.オーレは50位前後だった記憶あり。
この時、ルジャーンは3位だった。勝ったのは誰か、何故か記憶なし。

スポーツ界の言い方で「輝かしい過去のある人は引退」で「輝かしくない人は廃業」と申しますが、このペドロ.オーレが引退か廃業かはわかりません。
ですが自分で乗るトライアルを終わった後、どういう理由かはわかりませんが「OLLE(オーレ)」という自分の名前をつけたリアクッション専門会社をバルセロナで立ち上げました。
で、これで成功した今、トライアルに限っては営業が上手だったのか、OLLE(オーレ)のリアクッションを純正品として採用しているトライアルメーカーは多いですね。

6月から①番の陸が乗り始めている、’17年最新タイプSherco125にはこのOLLE R16V がついています。

 

ズバリ、このOLLE R16V は「値段が兼価」な作りのリアクッションです。
兼価とは、値段が安くて手に入れやすい、ものを言いますが、バラしてみるとすべての部品が他のリアクッションの部品の流用品で組み上げられています。流用品という言い方は、別の言い方だと余剰余り品在庫処分です。それにボディも鉄だしね。

まあ兼価版のリアクッションとはいえ、頑丈だし、それなりの動きで問題はないのですが、いかんせん、民間人の言い方で「リアクッションが抜けた」状態にけっこう早くなってしまいます。
リアクッションが抜けた状態とは、ダンパーも何もきかなくなり「フワフワ.スコスコ」になってしまうことですね。

フロントフォークは大気圧の中で組み立てていまして、密閉したフロントフォークの内部は動かしていなければ「圧力ゼロ」です。
ですがリアクッションはその性能を発揮維持するために、内部に10キロ以上の高圧をかけて組み上げています。

内部構造のわからない人が99.999%でしょうけど、単純に荒っぽく、リアクッションのボディの中を「高圧窒素室」と「オイル室」に分けていまして、その仕切板のことをフリーピストンと言います。
上の、部品バラバラ写真のなかの「左上隅」の、真ん中に穴のあいていない丸いアルミ製の部品がそれです。

はい、この仕切板(フリーピストン)の密閉性能が悪くて、すぐに高圧窒素がオイル室の方に漏れてしまうのが「フワフワ.スコスコ」になってしまうのが原因ですね。

写真の通りの部品がシリンダーの中を上下しているわけですが、外周2本のOリングで圧やオイルが漏れないようにはしている構造。
過去現在までに15本ほどこのOLLE R16Vのリアクッションをオーバーホールしましたが、100%の確率ですべて「高圧窒素がオイル室へ」「オイルが高圧窒素室へ」漏れておりました。
まだ受け取ったばかりの①番の陸用のシェルコについておりましたOLLE R16Vはどうかな、ってバラしてみましたが、やっぱり漏れておりました。

これは仕切板(フリーピストン)の設計構造上の性能の問題なのですが、スペイン製やイタリア製の場合、「そんなもんですよ」の考え方があるのは歴史的事実で、私達ハポネスも「まあ、そんなもんかぁ〜」で割り切りましょうね。
買った後、なおしてくれるところを探して漏れないようにやってもらうしか手立てはありません。

BetaMotor社長で、あのダビンチも通ったという絵画修復教習所が前身のフェレンツェ工科大学卒のラポ.ビアンキさんも「多少は町のバイク屋がいじる部分を残しておかないと、バイク屋が儲からないし、売って終わりでは修理費で稼げないだろう」と、申しておりました。

それと、やってもらうんだったら、ついでに上下動きのセッティングも変更した方がよろしい。
セクションが違うのもありますが、肉を食う屈強なスペイン人がテストしてOKの動きセッティングと、魚を食べる農耕民族の好む動きセッティングは違います。
農耕民族仕様のセッティングに変更することも、オススメですね。

うちのテストライダーに確認してもらいましたが「このリアクッションでは、日本人仕様はこれが限界」という付近の仕上がりです。

 

① リアクッションオーバーホールのみ→14,000円
② オーバーホールして + 動きセッティング変更→19,000円
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の、どちらか

 

③ Beta-Evoワークス最新タイプと同じフリーピストンに交換→5,000円
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純正をグリスアップして再使用しても、またすぐに漏れが始まるんで、この部品のみ必ず交換をオススメします。

 

蛇足ながら、Oリング2本を日本製の高耐圧耐熱フッ素Oリングに交換してテストしましたが、漏れるまでの時間がやや伸びるだけで、結局、漏れるのは治りませんでした。

フロントフォークは器用な民間人なら自分でオイル交換は可能です。というより、一郎さんもそこが出発点でした。
ですがリアクッションは、腕もさることながら専用の設備がないと無理。

ということで、このOLLE R16Vのリアクッションに限らず、どのメーカーのリアクッションも年1回は必ずオーバーホールに出しましょうね。

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